肺がん

参考文献:よくわかる肺がん Q&A 19ページ

気管、気管支、肺、縦隔は、図のようになっています。
気管、気管支、肺は、よく樹木に例えられます。
太い幹のような気管、左右の枝に分かれた左右の気管支、更に右気管支は、上葉、中葉、下葉に分かれ、左肺は、上葉、下葉に分かれます。
またそれぞれの気管支は20回以上に分かれて、ぶどうの房のような肺胞に到達します。

日本人男性の肺がんは、年々増加しています。厚生労働省の統計によりますと、日本人男性の死亡率は、 1993年からがんによる死亡原因の第一位となりました。また女性では、大腸がんについで第二位(2010年)となりました。今後の予測では、肺がんは患者の数でも死亡数でも、 将来最も増えるがんであると予想されています。このため肺がんの予防(禁煙など)と早期発見が重要な課題とされているのです。

(1)症状と検診、禁煙

肺がんの症状は、咳、痰、血痰(痰に血が混じること)、発熱、息苦しさ、胸の痛みなどですが、これらは、肺がんのみの特有の症状ではなく、 気管支炎、肺炎、肺結核など他の肺の病気でも出る症状です。このため、これだけで診断できるわけではありませんが、 このような症状が続く場合には、お近くの診療所に受診することをお勧めします。

次に検診ですが、大腸がんや胃がんでも早期発見が重要とされていますが、肺がんは、更に早期発見が重要とされています。 それは未だ大腸がんや胃がんと比較して治療成績が良くないからです。以前の肺がん患者さんは、血痰や息苦しさなどが出てから病院を受診し、 かなり進行した状態で診断されることが多かったのですが、最近ではCT検査の機会増加に伴い、早期の肺がんで見つかるケースがかなり増えています。 このため症状が出る前に定期的に検診を受けることをお勧めします。喫煙している方は、肺がんの最大の原因は喫煙のため、禁煙することを強くお勧めします。
また、受動喫煙(喫煙している人のたばこの煙を吸うこと)によって、子どもの中耳炎、気管支炎、肺の感染症や肺機能の低下などがおこることが知られています。 WHO(世界保健機関)の報告(2010年)では、世界で年間約60万人が受動喫煙で亡くなり、そのうちの約15万人は5歳未満の子どもたちです。 愛する我が子や孫たちのためにも、是非とも禁煙してください。

(2)検査

肺がんの発見に有用な検査は、まず胸部X線写真と胸部CTです。X線写真や胸部CTで、肺に異常な影がある場合には、 異常な影の部分から一部組織のサンプルを採り出して(肺生検)顕微鏡でがん細胞があるかどうか調べます。肺生検としては、 気管支鏡というカメラを使用する方法やCTなどを使用して皮膚から針を刺して組織を取る方法などがあります。但し、これらの方法でも肺がんと確定診断できない時には、 診断と治療を兼ねて、全身麻酔の手術を初めから行う事もあります。
次に、肺がんが強く疑われた場合には、がんの進み具合(進行度、病期ともいいます)を調べる検査を行います。

参考文献:よくわかる肺がん Q&A 47、50、44、51ページ

肺がんの進行度を診断するために大事な点は、

  1. 肺がんの大きさや周りの臓器への浸潤(しんじゅん:がんが周りの組織に入っている状態)、悪性胸水(あくせいきょうすい:がん細胞が含まれる胸の中にたまった水)や 胸膜播種(きょうまくはしゅ:肺の表面などにがん細胞が広がっている状態)がないかどうか
  2. リンパ節転移:リンパ腺にどの程度広がっているか
  3. 遠隔転移(えんかくてんい):血管の中にがん細胞が入って、他の臓器に広がっていないか。肺がんの転移しやすい臓器:脳、骨、他の肺、副腎、肝臓

以上の3点について、検査を行って進行程度を判定します。
進行度を調べる検査には、当院では最新鋭のCT検査(256列と320列)の他、頭部MRI(核磁気共鳴)検査、骨シンチグラフィー、PET(陽電子断層撮影法) 検査(他の施設に依頼)などを施行し、確実な診断を行うよう努めています。

臨床病期分類

参考文献:よくわかる肺がん Q&A 64ページ

(3)治療

肺がんの治療は、

  1. 手術
  2. 化学療法(抗がん剤)
  3. 放射線治療
の3つの方法を単独または組み合わせて行います。

当院は、肺癌診療ガイドラインに基づいて治療を行なっています。
化学療法は呼吸器内科、放射線療法は放射線治療科の専門医が担当し、手術は当科が担当しています。
当院では、臨床病期(治療を始める前に決める病気の広がりの程度)ⅡBまでの患者様に対しては、手術療法を先行し治療しています。 臨床病期ⅢA期では、術前(放射線)化学療法を施行し再評価後に手術を行っています。臨床病期ⅢB期以上の場合には、基本的には手術療法は行いません。 ただし、臨床病期Ⅳ期で単発脳転移の患者様に対しては、定位放射線手術と化学療法(後述)を行った後、リンパ節郭清(転移している可能性のあるリンパ節を切除すること)を 含む根治的手術療法を施行しています。病理病期(切除した肺やリンパ節を調べて決める病気の広がりの程度)ⅠB期以上の患者様に対しては、 術後補助化学療法(飲み薬もしくは点滴による)を施行しています。

1.手術

当科が担当しています。肺は、右は上葉・中葉・下葉の3葉、左は上葉・下葉の2葉に分かれています。
手術は、肺がんに侵されている肺葉を完全切除することが標準的な治療とされますが、肺がんの広がりや患者様の状態によっては、上記よりも大きく切除したり、 逆に小さく切除することもあります。当科では、上記の肺葉切除術は、10年ほど前から約7〜10cmの傷と胸腔鏡(胸の中を診るカメラ)を用いて手術を行うようになりました。
更に2年前より、早期の肺がんに対しては、強い癒着(肺が胸の壁に強く付いてしまうこと)がないなどの条件はありますが、約4cm程度の傷と約5mm〜12mmの傷2〜3ヵ所で行っています。 これを完全胸腔鏡下肺葉切除術と言います。
当科は、できるだけ患者さんの負担が少なくなるように、積極的にこれらの手術方法を導入しています。

参考文献:よくわかる肺がん Q&A 67ページ

2.化学療法(抗がん剤)

手術や放射線治療が局所的な治療であるのに対して、化学療法は、飲み薬や点滴で投与された抗がん剤が、血管の中を通って全身に巡っていき、 全身に広がったがん細胞に対して効果を発揮します。肺がんの組織のタイプや進行度、患者様の他の病気の状態などを総合的に判断して、抗がん剤の種類や投与する量、 投与する間隔などを決めます。
また近年がんの研究が進んだことで、がん細胞の中のがんに関係する遺伝子を調べることにより、より効果的な治療を選択できるようになりました。 ゲフィチニブ、エルロチニブ、クリゾチニブというこれらの薬は、分子標的治療薬と呼ばれており、気管支鏡や手術によって得られたがん細胞を調べることで、 これら治療薬の効果を、ある程度予測できるようになってきました。

3.放射線治療

肺がんの病巣に放射線を当てる治療法です。肺にできた肺がん自体に放射線をあてることだけはなく、 転移した病巣、例えばリンパ節や脳や骨の転移に対しても治療を行うことができます。
2012年3月より当院東側に外来東館(腫瘍センター)が開設され、この館内に当科、呼吸器内科、放射線治療科の外来診察室と外来化学療法室があり、 また最新の高精度放射線治療装置2台(ノバリス)が設置されています。この放射線治療装置は、定位放射線治療(定位放射線照射と定位放射線手術)といって、 肺がんの病巣にピンポイントで高線量の放射線をあてる装置で、以前の放射線治療装置より治療効果や安全性に優れています。