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診療科

膵癌



膵臓とは

膵臓は、胃の裏側にある約15cm長の細長い扁平な臓器で、その右側を十二指腸が取り囲むように位置しています。膵臓の右側は厚く(約3cm)、「頭部」と呼ばれており、左側へいくにしたがい薄くなり(約2cm)、「体部」「尾部」という呼び方をします。膵臓の重さは平均74gです。
また、その中央を縦断する形で「主膵管」という膵液を十二指腸に流す管が通っています。
膵臓の働きには大きく分けて以下の2つがあります。
内分泌 血糖をコントロールする「インスリン」「グルカゴン」などのホルモンを産生・分泌します。
外分泌 多くの消化酵素(アミラーゼ、トリプシン、リパーゼ、など)を産生し、主膵管を通して十二指腸へ分泌します。

膵癌について

膵臓にできる癌を「膵癌」と呼びますが、大きく分けて以下の4つに分けられます。
浸潤性膵管癌 膵管上皮(膵管の内側の細胞)から発生する癌で最も多いタイプ。
腺房細胞癌 消化酵素を作る「腺房細胞」から発生する癌で、比較的まれ。
神経内分泌癌 ホルモンを分泌する細胞から発生する腫瘍(多くが良性)が癌化したもの。
粘液産生膵癌 粘液を多く産生する膵管内腫瘍が癌化したもの。早期の予後はよいが、浸潤すると予後は浸潤性膵管癌と同様。

膵癌の進行の仕方

癌の進行は大きく分けて、局所進行(癌の発生した場所)と遠隔転移(離れた臓器への転移)、播種(癌から直接周囲組織に癌細胞がこぼれること)の3つに分類されます。膵癌で最も多い浸潤性膵管癌の進行の仕方を以下に示します。

局所進行

膵癌は膵管の一番内側の粘膜から発生します。粘膜にできた癌は、膵管内腔に沿って上下に広がったり、粘膜から膵管の外側に向かって進行していき、膵管の外側の組織に浸潤します。膵頭部に発生した場合、効率に膵内の胆管に浸潤し、黄疸の原因となります。
さらに膵外に広がった場合には、周囲の臓器(十二指腸、胃、結腸、血管(門脈や肝動脈、上腸管膜動脈、脾動静脈など)、神経など)へ容易に食い込んでいきます。
また膵癌では膵周囲(多くは背側)の神経線維に沿って癌が伸びていくような場合が多く、これを「神経浸潤」と呼びます。この浸潤により、肉眼的にはわからない範囲まで癌が広がっていることがよく見られます。

遠隔転移

遠隔転移には大きく分けて以下の2つのルートがあります。
リンパ節転移 リンパ液の流れに乗って近くのリンパ節から遠くへと広がっていきます。
血行性転移 血液に乗って他の臓器に転移します。膵管癌の場合、最も多いのは肝臓への転移です。そのほか、肺やその他の臓器へ転移することがあります。

播種

膵から発生した癌が外側に進行して、膵外へ達し、そこからこぼれて腹腔内へ散らばることです。

膵癌の病期分類

各種の癌は、その分類や治療法の参考としたり、統計上の予後を調査するため、「癌取扱い規約」によって病期(進行度)が決められています。膵癌は「膵癌取扱い規約」内で病期がI~IV(a、bに分かれる)に分けられています。
進行度は、手術前、手術時の肉眼所見、手術後の病理検査所見の3段階でそれぞれ判断されますが、最終的には病理検査所見が 最も重要です。
Stage I 癌の広がりが膵内にとどまり(2cm以下)、リンパ節や他の臓器への転移、播種などが認められない。
Stage II 癌の広がりが膵内にとどまっているが2cm以上か、近傍のリンパ節に転移している。
Stage III 癌が膵周囲組織にわずかに浸潤しているか、少し離れた(切除可能な)リンパ節に転移している。
Stage IV 癌がStage III以上の広がりを示すもの。

膵癌の症状

全身倦怠感、食欲不振、上腹部痛、背部痛などが見られますが、初期の段階では症状がはっきりしないことがほとんどです。
ある程度癌が大きくなると、胆管に浸潤して胆管の内腔が狭くなり、胆汁の流れが滞ってその成分が全身に蓄積し、皮膚や眼球結膜などが黄色くなる「閉塞性黄疸」や、発熱、体重減少が出てきます。また、糖尿病が発症したり、悪化したりすることがあります。

膵癌の診断

膵癌が疑われた場合、以下の検査を施行します。ただし、発症時にはほとんどの患者さんがStage III以上であることが多く、癌であるかどうかと、病巣の広がりを並行して調べることがほとんどです。
採血 腫瘍マーカー(CEA、CA19-9、DUPAN2、SPAN-1など)
画像検査 腹部超音波検査、腹部CT検査、腹部MRI検査(MRCP)等
内視鏡を用いた検査 経内視鏡的胆道造影(ERCP)、経内視鏡的膵管鏡、経内視鏡的膵管内超音波(IDUS)等

膵癌の治療

癌の治療には、一般的に
  1. 外科的切除(開腹もしくは腹腔鏡下手術)
  2. 抗がん剤による治療(化学療法)
  3. 放射線治療
  4. の3つがあります。
膵癌の場合、化学療法や放射線治療単独の治療のみでは根治的治療(完全に癌を治すことを意図した治療)は難しいとされており、まずは外科的切除を中心とした治療を考え、状況によって化学療法や放射線治療を組み合わせた「集学的治療」を行います。
また、現代の医学では根治治療が難しいと判断された場合には、症状を緩和したり、患者さんの生活レベルを上げるための非根治的治療が選択されることもありますが、あくまで患者さん本人やご家族としっかりご相談の上で方針を決定しており、希望があれば、セカンド・オピニオンも積極的に活用しています。

当科での膵癌に対する治療

当科では膵癌に対する根治療法の中心である外科的切除を積極的に行っており、全身状態の細かい評価結果から、安全に手術が完遂できると判断した場合、根治切除を目指して必要十分な切除・再建を施行します。
膵癌は、その位置や伸展形式から、以下のごとく術式が選択されます。
膵頭部癌 膵頭十二指腸切除(開腹)
膵頭部および十二指腸と胃の一部、胆嚢、胆管、周囲のリンパ節を同時に切除、再建します
膵体部または尾部癌 膵体尾部切除(腹腔鏡下手術も可能)
膵の体部、尾部、脾臓、周囲のリンパ節を同時に切除します
膵頭部~膵尾部まで広がる癌 膵全摘(開腹)
膵全部と十二指腸、脾臓、周囲のリンパ節を同時に切除、再建します
また、血管に浸潤がある場合には上記に加えてそれらの合併切除→再建も必要になります。
これらの手術は比較的難易度が高く、合併症の多い手術として知られていましたが、現在では安全性が高まり、重篤な合併症は、徐々に減少しています。
これはある程度コンスタントに膵癌の手術をする施設に患者さんが集まり、手術手技と周術期管理が安定したからと考えられています。 当科は、2008年から日本肝胆膵外科学会に高度技能医修練施設(2015年3月現在、県内5施設)として認められ、肝胆膵の高難度手術を年間50~70例程度施行しています。膵癌の手術においても、2008年以降、重篤な合併症は認められておりません。
切除の際には、術中に病理検査を施行して(術中迅速病理診断)、癌の取り残しのないように努めます。
また、切除した病巣の広がりを検討し、完全切除できていても、術後に化学療法や放射線療法を追加することもしばしばあります。

神経内分泌癌について

神経内分泌癌は、インスリンやグルカゴン(血糖を調節するホルモン)などを分泌する細胞から発生する腫瘍(多くが良性)が癌化したものです。症状は、過剰分泌されるホルモンによる症状(高血糖、低血糖、消化性潰瘍、下痢など)がみられることがありますが、 まったくホルモン分泌のないものも多く、発見時には進行しているケースも比較的多い疾患です。 膵管癌と同様に他臓器転移(主に肝)を起こしますが、リンパ節転移や腹膜播種は比較的まれであり、進行も膵管癌に比較 してゆっくりなケースが多く見られます。そのため当科では、たとえ肝転移などを伴っていても、切除、抗がん剤の全身投与や肝動脈内注入などにより、長期生存が得られる患者さんがいます。もし診断が下されても、あきらめてしまわずに、一度ご相談ください。

治療成績

膵癌 切除46例 全生存率(2008-2014年)
  • 3年生存率:32.8%
  • 5年生存率:(-)%

膵癌 切除46例 Stage別生存率(2008-2014年)

Stage1+2(n=9)
  • 3年生存率:54.7%
  • 5年生存率:(-)%
Stage3+4(n=37)
  • 3年生存率:29.9%
  • 5年生存率:(-)%