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くすりの話

第11話 輸血について


2006年7月/磐田市立総合病院 薬剤部
大きなケガや手術などにより出血が多くあった場合に輸血が行われます。今回は輸血について考えます。

輸血の目的は血液中の赤血球などの細胞成分や凝固因子など蛋白成分が量的に減少又は機能的に低下したときに、その成分を補充することにより症状を改善することです。その場合、輸血による危険性と治療効果を考慮し、輸血量は効果が得られる必要最小限にとどめ、過剰投与は避けます。また他の薬剤によって治療が可能な場合には輸血は極力避けるようにします。

輸血方法では以前は主に全血が輸血されていましたが、現在は目的以外の成分による副作用や合併症を防ぎ、循環系の負担を最小限にするため、成分輸血を行うようになってきています。また、あらかじめ輸血の使用が計画されている手術のときなどは、輸血による免疫反応等による副作用を避けることができる、患者さん自身の血液をあらかじめ蓄えて使用する自己血輸血が推奨されています。

血液成分は有形成分(血球成分)と液体成分(血漿)によって構成されています。有形成分は血液中に含まれる血球成分です。その中には赤血球(各組織への酸素の供給、各組織からの二酸化炭素の運び出しの役割を担う)、白血球(異物の排除、免疫に関与)、血小板(血液凝固に関与し、止血の役割を担う)があります。   液体成分にはタンパク質や凝固因子が含まれます。

輸血用の血液は献血によって集められた血液を調製することによって作られています。その献血には血液中から必要とする有形成分や液体成分だけを採り出し、その他の血液成分は献血者に戻す成分献血と、血液全ての成分を採り出す全血献血があります。

現在は成分輸血が主流となっており、全血は全輸血用血液の供給本数のおよそ2%程度を占める程度です。
以下は主に扱っている血液製剤です。
MAP加赤血球濃厚液 赤血球を補充し、末梢循環系に十分な酸素を供給することを目的とします。血漿と血小板・白血球層を除いた赤血球層にMAP液(赤血球が壊れないようにするための物質や赤血球のエネルギー源となるブドウ糖等が含まれている)を添加して調製したものです。
血小板濃厚液 血小板成分を補充することにより止血を図り、又は出血を防止します。使用期限は採血後72時間と短いため注意が必要です。
新鮮凍結血漿 凝固因子の補充による治療投与を主目的とします。全血より分離された血漿を採決後6時間以内に速やかに凍結したものです。
輸血療法の安全性の確保、血液製剤の適性使用をするために次のような業務が行われています。 輸血用血液製剤の管理では献血によって得られた貴重な血液製剤に無駄が出ないよう在庫数管理、血液製剤保冷庫の温度管理をしています。 輸血後GVHD(移植片対宿主病といい輸血血液製剤中に含まれる供血者由来のリンパ球が、受血者の組織を攻撃・破壊してしまう反応)の予防のため輸血用血液に放射線を照射します。これによって輸血血液製剤に混入している供血者のリンパ球を破壊することでGVHDの予防となります。 献血による血液製剤だけでなく自己血の保管管理も行っています。

輸血関連検査では.血液型検査(ABO式、Rh式等)、不規則性抗体検査(過去の輸血や妊娠により、赤血球抗原に対する抗体が産生されていないかを検査)、交差適合試験(患者さんの血液と輸血する血液が適合しているかを検査)が行われています。

血液型は主にABO式とRh式によって分別されます。ABO式は赤血球の表面にあるA、B抗原の有無、血清中に存在する抗体の有無によって区別されます。Rh式はABO型と同様に赤血球表面の抗原の種類によって区別されますが、その対象となる抗原は48種類にもなります。一般にいわれるRhプラスとかマイナスといわれる分類はこの一種になります。

このように血液製剤はいろいろなチェックを受け輸血が必要な場合には、より安全により適正に使用できるよう管理されています。
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