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くすりの話

第7話 治験のはなし


2005年7月/磐田市立総合病院 薬剤部
外国ではすでに治療に使われている薬が日本では使えないなどということが、最近マスコミでしばしば取り上げられます。日本の製薬メーカーが国内よりも欧 米で治験を先行して行うケースが増加していることも原因のひとつと考えることができます。このことは国内における「治験の空洞化」と言われています。
最近、その空洞化を防ぐため治験をより早く、そして質を高くし、かかる費用も低くしようとする国の取り組みが行われています。そのような動きの中で静岡県でも当院をはじめ県内24病院(平成16年度現在)が参加し治験の推進に努めています。
しかし、治験には患者さんのご理解とご協力がなにより必要となります。今回はその治験に関する疑問点を説明したいと思います。

そもそも治験とは何で、それがなぜ必要なのでしょうか?

製薬メーカーが開発した、たくさんの薬の候補のうちから実際に医薬品になるのは6000分の1といわれていますが、そのような中から治療効果のある薬 (正確には薬の候補)を医薬品として患者さんに治療として病院などで使用できるようにするためには、厚生労働省の承認を受けることが必要です。そのためには、実際に患者さんや健康な人に協力してもらい、承認前に薬の効果(有効性)と安全性を確かめる必要があります。これが治験(臨床試験)です。治験は薬を創るという意味から「創薬」と言われるステップのひとつになります。もちろん、その前には動物実験での効果や安全性は確かめられていますが、実際に「人」で確認する必要があるのです。

治験は安全に行われるのでしょうか?

全く副作用が出ないと言い切ることはできませんが、治験に至るまでに動物実験を繰り返して、生体への安全性を確認します。そして治験の第1段階ではボランティアの健康な成人を対象とした安全性確認が行われます。
しかし、患者さんの健康状態や体質、体力は健康な成人と大きく異なるため、副作用が発現する可能性がないとは言い切れません。このため、治験では「医薬品 の臨床試験の実施の基準」(GCP)といわれる厳しいルールに従い、安全の確保と人権保護を最優先して行われなければならないことが法律で義務付けられて います。
当院を含めて治験を実施する病院では、「治験審査委員会」を設置し、安全面や倫理面で問題がないか審査・検討を行い、治験実施中も定期的に安全性のチェックを行っています。

治験に参加することによるデメリットはあるのでしょうか?

治験期間中は、通院や検査のために余分に時間をさかなければならない場合があること、来院、服薬などのスケジュールを守らなければならないことなど注意事項を守ることなどが挙げられます。
治験薬と効果を比較するための偽薬(プラセボ)のどちらか選べないこともデメリットといえます。これらのことは担当医師から説明がありますので、了解の うえで参加していただくことになります。治験はすべて患者さんの「本人の自由意思」に基づいて行われます。

プラセボとは

治験では、有効成分を含まず、治療効果のない薬を服用する場合があります。このような薬を「プラセボ」または、「偽薬(ぎやく)」といいます。プラセボは、外見(外の色・形・大きさ・肌合い・中の色)、重さ、味覚の点で治験薬と全く同じに作られています。
医師や患者さんによる思い込み(暗示)の影響を排除し、治験薬の本当の有効性を明らかにするためにプラセボは用いられています。

治験に参加したときの医療費の負担はどうなるのでしょうか?

初診料、再診料、交通費は自費負担ですが、負担軽減のため「協力費」が支払われます。費用に関しては一般の治療に比べて少なくなります。また、治験参加中の検査料、薬代(一部)を負担してもらうことができます。

治験薬の効果や副作用などは説明してもらえるのでしょうか?

治験担当医師あるいは治験コーディネーター(当院では専門に研修した薬剤師と看護師が担当)が、治験への参加を希望する患者さんに対して治験の内容を詳しく説明し、十分な情報を提供します。
患者さんはメリットとデメリットを十分に理解し、納得していただいた上で、治験に参加するかどうかを自由意志により判断していただくことになります。

途中での中止は可能でしょうか?

この様な説明を受けて、治験参加の同意説明文書にサインした後でも、治験に参加された患者さんの判断で、理由のいかんにかかわらず、途中であっても治験参加を取りやめることができます。不安を感じた場合は遠慮なく、やめたい意思を伝えて下さい。また、治験によって副作用が発現した場合も同様です。
治験を途中でやめることによって患者さんが不利益を受けることはありません。ただし、治験薬の投与を急に中止することで、患者さんの病状に重大な影響を及ぼす可能性があると治験担当医師が判断した場合は、その危険性がなくなるまで治験薬の投薬を継続していただく場合があります。

より有効な医薬品を1日も早く治療の場に提供できるよう、「創薬」にご理解とご協力をお願い致します。

参考資料

静岡県治験ネットワークホームページ<治験Q&A>
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