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平成25年5月(第3号)

医学生のみなさんこんにちわ。磐田市立総合病院の2年目研修医です。私達の研修病院はレクチャーが充実しているのが、特徴のひとつですが、今日はそんなレクチャーのひとつ「新患カンファレンス」 の様子を報告したいと思います。
「新患カンファレンス」は研修医が自分の担当した症例をひとつ取り上げて、病歴や理学所見、検査結果を提示して皆で 診断を考えてみよういうカンファです。まるで某TV局の総合ドクター○ のような感じで毎回熱い(?)カンファを繰り広げています。


○月×日 新患カンファレンス

※症例中の情報は個人情報保護のため、一部変更して掲載しております。

寺田先生(以下、寺):じゃあまず、患者の概要を教えてください。
研修医A(以下、A):はい、今日の症例は84才、男性で呼吸苦と悪心を主訴に来院した方です。既往歴は白内障と糖尿病があって、 内服薬はグリミクロンを内服しています。生活歴はADLは自立しており、喫煙歴なし、お酒は焼酎お湯割り500ml/日、長男家族と同居しています。

:はい、ありがとうございます。84才という高齢の患者さんにおこった呼吸苦と悪心ということですね。既往に糖尿病があるのと、 アルコール常飲歴があるのが気になりますね。ここまでで、何か聞いておきたいことはありますか?

研修医B:糖尿病のコントロール状況はどうでした?
A:HbA1c は8程度だったようです。内服のコンプライアンスは良好です。

:では大体の患者さんのイメージがついたところで、現病歴を聞いていきましょうか。
A:現病歴ですが、10年程前から糖尿病で近医に通院していました。2月入ってすぐに妻が他界し、3日間大量飲酒を続けたそうです。 2月7日から食欲不振、悪心、口渇出現しました。食事摂ろうとするが、すぐに嘔吐してしまうような状態でした。
2月8日呼吸苦が出現し、安静にしていても息苦しさが続いたそうです。
2月9日症状続くため、救急外来受診となりました。

:はい、ありがとうございます。3日間の大量飲酒の間は食事や内服状況はどうでしたか?
A:食事は全く取っていなかったそうです。内服状況は不明です。
研修医C:発熱や腹痛などありましたか?
A:発熱なく、腹痛や背部痛もありませんでした。

:ではここまでで考えられる疾患を挙げてみましょう。

(研修医達から以下の鑑別疾患が挙がりました)
  • 低血糖
  • 糖尿病性ケトアシドーシス
  • 肝不全
  • 膵炎
  • アルコール性ケトアシドーシス
  • ウェルニッケ脳症
  • 脱水から心筋梗塞
  • たこつぼ型心筋症 などなど
:既往歴から低血糖や糖尿病性ケトアシドーシスは考えられますね。また大量飲酒がきっかけになって膵炎や肝不全も有り得ます。 重篤な疾患という意味では大穴で心筋梗塞も考えておいてもいいですね。さらに大穴ですが、近親者との離別によるストレスでたこつぼ心筋症というのも面白いですね。

ではこれらの疾患を念頭にして、診察時の理学所見を教えてください。
A:血圧 128/74、脈拍 108、SpO2 100%(room air)、呼吸数 24、体温35.9℃
GCS E4V5M6
眼瞼貧血なし、黄疸なし
口腔内乾燥あり
胸部、腹部、四肢 異常所見なし

:はい、ありがとうございます。検査データなど見る前に、理学所見だけで病態を考えてみましょう。バイタルをみてどうですか?何か気づくことありますか?

研修医C:脈拍が早いです。それから呼吸数も多いですね。

:そうですね。糖尿病性ケトアシドーシスの特徴的な呼吸は何て言うんでしたっけ?

C:クスマウル呼吸です。

:そうですね。クスマウル呼吸では深く大きいな呼吸がゆっくりと連続しますが、ひょっとしたら血糖値の異常と代謝性アシドーシスがあるのかもしれませんね。 脈拍が早いのはどう考えますか?

研修医D:口腔内乾燥しているので、脱水による循環血漿量の低下が考えられると思います。

研修医E:黄疸は無いとのことですが、他に肝不全を疑う所見は何かありましたか?

A:手掌紅斑なし、毛細血管の拡張も認めませんでした。

:鼻の毛細血管拡張は、肝硬変の診断で感度は低いですが、特異度は高いと言われています。手持ちのデータでは陽性尤度比が10.3、陰性尤度比は0.2となっていますね。では、この辺りで検査データを見ていきましょう。

A:では、まず採血データです。
BS 600
WBC 12000
Na 124
K 5.0
CL- 102
(一部のみ抜粋)

血ガス
pH 6.922
PCO2 7.7
O2 158.3
HCO3- 1.6

:はい、ありがとうございます。血糖値が高いですね。血ガスを見てどうですか?

研修医B:かなりのアシデミアです。代謝性アシドーシスがあって呼吸性代償を認めます。アニオンギャップを計算すると20なので開大しています。

:アニオンギャップ開大してますが、補正HCO3を計算すると9.6となりますね。23以下の場合は別個に代謝性アシドーシスが存在している可能性がありますね。 Naが低くて、Kが高値ですがこれはどうでしょう?
研修医C:血糖値が高いので浸透圧上昇によって低Naを来した可能性が考えられます。血糖値100上昇するとNaが1.6mEq/L低下すると言われています。 Kが低いのはアシデミアのせいでしょうか。

:アニオンギャップが開大している原因を調べるために何か検査しましたか?

A:尿検査でケトン体(3+)となっています。ケトン体分画を調べると総ケトン体16000μmol/L、アセト酢酸3080 μmol/L、3ヒドロキシ酢酸 13000μmol/L と 上昇認めました。以上から診断は糖尿病性ケトアシドーシスと診断して治療を開始しました。

:はい、ありがとうございます。では、どんな治療をしてどういう経過をたどったか、簡単に教えてもらいましょう。

(この後、研修医から治療と経過についてプレゼンが続きました。)
いかがでしたか?このような自分が担当した患者さんについて、カンファで報告しながら診断や鑑別を勉強しています。 雰囲気は和気あいあいとしており疑問に思ったり、分からないことは自由に質問できるし、逆に自分の知ってることは回りの研修医に教えてあげられます。 週2-3回程行なっているので、一年でかなりのたくさんの症例を学ぶことができますし、診察から診断に至るまでの思考のプロセスを学ぶことができます。 また、自分以外の研修医がどんな症例を経験したのか、知識や経験を共有できるのも嬉しいですね。学生の皆さんも是非一度見学にいらして参加してみてください。 一緒に勉強しましょう。たくさんのご参加をお待ちしております。